「もし私たちが自分の欠点や弱さをありのままに受け止め、欠点や弱さがあったとしても、自分は幸せな人生を送るに値すると信じるならば、愛が入ってくるための巨大な窓を開け放すことが出来るのだ」。
上記の文章が、パウロ•コエーリョさんの書かれた『ヴァルキリーズ』、終章の一節として紹介されていました。七年前に読んだ、アンアンスペシャル「あなたの願いを叶えましょう!『引き寄せの法則』で幸せになる。」(マガジンハウス)と題された雑誌の中で、でした。この言葉の内容が今のほうが理解できそうな気がしたので、『ヴァルキリーズ』を読んでみました。
この本で語られている出来事は、1988年9月5日から10月17日の間に、パウロさんの体験したことであるそうです。読者がよりよく理解できるように、いくつかの出来事は時間的な順序を変え、二箇所だけは想像によって作られたお話だといわれています。重要な出来事はすべて事実なのだとありました。
そのためにパウロさんは、この本を書くことが、とても難しい仕事だったと振り返っておられます。その理由として、三点のことを挙げています。まずは、「読者の皆さんに繊細な感覚を要求する事柄を扱っているからです」とあります。次に、パウロさんは多くの人々にこの物語を話してきていたために、書き下ろす力が消耗しているのではないかという恐れがありました。彼がこの本を書いたのは、1992年1月と2月だったことが記されています。三年余りの年月も過ぎていたようですが、最後まで書き終えたとき、恐れに過ぎなかったことがわかったそうです。
そして三つ目の、この本を書くにあたっての最も困難だった理由は、パウロさんに起こった出来事を書くためには、彼の心の内や、周囲の人たちとの関係性など、個人的な生活を人前にさらすことになるからでした。自分にとって容易ではなかったとありながらも、パウロさんは体験を分かち合ってくれたのです。
お話の始まりです(以後、敬称は省略させていただきます)。パウロは、リオデジャネイロで、魔法の道を歩むためのマスター(先生)であるJに、書き上げたばかりの本、『アルケミスト』の原稿を見せました。その本は、パウロのJへの感謝の気持ちであり、Jが教えてくれた愛を他の人たちにも伝えるためのものでした。原稿をコピーではなく、一つしかない元原稿にしたのには訳がありました。
『アルケミスト』を読んだJは、今までパウロと一度も話し合ったことのない内容を、彼が正確に書き表しているのを認めました。また、Jは、どうしてパウロがそれを書くことができたのかも知っていました。『アルケミスト』が素晴らしい本であることを認めたJは、パウロに新しい課題を一つくれたのです。パウロが、自分を守護してくれている天使と話すという課題でした。
パウロは、Jに、どうして自分はこれをしなければならないのかを尋ねました。何かをなしとげるとき、必ず聞かなければならない質問であると、Jが教えてくれていたからです。「なぜなら、人はいつも自分の愛するものをダメにするからだ」と、Jが答えました。もしパウロが課題をやりとげることができたら、そののろいを打ち破ることができるというのでした。
パウロは、妻のクリスと二人で、ブラジルからアメリカのモハベ砂漠へと旅立ちました(モハベ砂漠は非常に広大で、多くの州にまたがってメキシコまで続いていたとあります)。パウロは砂漠に、40日間滞在することを決めていました。
まず、パウロとクリスが訪ねたのは、カリフォルニア南部にある砂漠の街、ボレゴスプリングスから数マイル離れた砂漠の真ん中に、一人でトレーラーに住んでいる男性、ジーンのところでした。以前、Jとの話の中で、ジーンが守護天使と話すことを聞いていたのです。ジーンは、想像していたよりもずっと若い青年でした。彼は、クリスを魔法の最初の入り口に導きました。それをするように頼んだのはジーンの天使で、天使は、あとは彼女の夫がクリスの面倒を見るだろうと言ったのです。
ジーンは、また、パウロにヴァルキリーズのことを教えました。ヴァルキリーズは、奇妙な服装で砂漠の街から街へと巡る旅をする、美しい馬に乗った八人の女性たちのことでした。ジーンが自分の天使に会えたのは、ヴァルキリーズの助けがあったからでした。
パウロが紡がれたこの本を読み、恐怖を追体験し、言霊は存在するのだと、あらためて感じました。それに、自然の最も大切な法則として、「全ての動きは時に休息を必要とする」という言葉を聞くことができて幸いでした。
また、ジーンがパウロとクリスに、初心者は絶対に夜の砂漠に行ってはいけないことと、日中の一番暑い時間も避けたほうがよいことを教えてくれました。その後二人は、安全のために、砂漠では少なくとも行き先については知らせることを約束しました。すぐに帰ってくるときも、行き先がそれほど遠くないときであってもです。一連の教えは、砂漠はもちろん、他の場所にも応用できるものであると思われます。
ヴァルキリーズの最年長であるバルハラが、パウロに力を貸してくれました。それは、ジーンが話した通り苦悩に満ちたものでした。パウロとクリスは、砂漠で何度も死んで、また再び生まれたのだとありました。パウロは、「人はいつも自分の愛するものをダメにする」というのろいを打ち破ることができました。そして、彼の守護天使に会えたのでした。
文頭にある、この本の終章の一節には続きがありました。それを、最初からもう一度書き写させていただきます。
「もし私たちが自分の欠点や弱さをありのままに受け止め、欠点や弱さがあったとしても、自分は幸せな人生を送るに値すると信じるならば、愛が入ってくるための巨大な窓を開け放すことが出来るのだ。そして私たちの欠点はすこしずつ、消えてゆく。なぜならば、幸せな人は世界を愛だけを持って見ることが出来るからである。愛こそ宇宙に存在するすべてのものを再生する力なのだ」。
自分を許せないと、しあわせにはなれません。自分を許すためには、自分を許すのと同じ気持ちで人を許すことが必要です。いたらないままで、ありのままで、感謝してしあわせになろうと思いました。