ヒメツルソバ日記

明るい気持ちになった物事を綴ります

映画『トスカーナの休日』を観て③

(②からつづいています)


嵐の夜、家の外に置いてあった洗濯機は、カミナリが落ちて壊れてしまいます。翌日、不動産業者の男性、マルティーニが、改装業者が来る日だということもあって、家を訪ねてくれました。改装工事を依頼することにしたのは、ニーノというこの地域に住む中年の男性です。前にもこの家を修理したことがあるといいます。あと三人、ポーランドからやって来ている労働者、英語を少しだけ話せる青年パヴェルと、本職は文学教授だと後に知ることになるイェルジ、それからフランシスに好意を持つようになるズビグニューと、チームで作業をするようです。マルティーニがニーノの母親を知っている、ということもありました。


ニーノは、家に一人で住むフランシスを夕食に招いてくれました。そこで彼女は、街で“ブラマソーレ”の意味をおしえてくれた女性と再会します。その女性、キャサリンは、今は亡き愛する人からの助言をフランシスに話しました。フランシスは、その助言に励まされ、家の外壁に沿って延びているツタをひたすら刈っていると、ツタの葉の下で休んでいた大きなヘビが、開けていた窓から部屋の中に入ってしまったのです。


フランシスは、不動産業者のマルティーニにヘビが留まっていないか家の中を調べてもらいました。ヘビはどこかへ行ったようです。フランシスは、(寝室が三つもあるような)こんな大きな家で自分は何をしているのだろうと、マルティーニに話しかけます。そして、不意に出てきた涙を拭って、彼にあやまりました。マルティーニは、風邪をひくといって、そこにあったショールを彼女の背にかけて、部屋のストーブに火をつけてくれました。


それからマルティーニは、フランシスが離婚してから心の内に溜めていたものを、彼女が話し終わるまで聞いてくれました。彼女が、自分が愚かだったのだと振り返ったときにだけ、彼は誰が聞いても否定しないであろう短い言葉で返したのです。そして、家族もいないのに、こんな大きな家を買うなんて……と口にしたフランシスに、マルティーニはすこし笑って、なぜ買ったのかと尋ねました。


フランシスは、懲りたはずなのに、憧れているのだといって、自分の願っていることを話しました。それを聞くとマルティーニは、オーストリアとイタリアの間にある、アルプス山中の険しい峠に、ウィーンとベニスを結ぶ線路が敷かれたのは、列車が走るずっと前であったのだとおしえてくれました。いつか列車が通ると信じてつくられたというのです。フランシスに笑顔がもどると、マルティーニは、もう悲しまないでといって、そうでないと、あなたと間違いを犯しそうだと話し、愛する家族のあることを告げました。フランシスはうなづいて、二人は笑い合ったのです。


親友のパティがフランシスの家を訪ねてきました。来る前に連絡がなかったのは、身重のパティが飛行機で移動することを、フランシスが心配すると思ったからでした。パティは、子どもを望んでいないパートナーと別れて、フランシスのところに相談にきたのでした。


家の改装工事は、二つの部屋を一つにしようとして壁がガラガラと崩れてきたり、水と湯の配管を間違えることもありましたが、穏やかに終わります。パティは無事に出産しました。赤ちゃんの名前は、アレクサンドラ。家族が一人増えました。


また、家の改装工事をしてくれたパヴェルは、フランシスの家で結婚式をします。フランシスと、街で知り合ったイタリア男性との恋は、繁雑な日々の中ですれ違って終わりました。けれど、人生は不思議です。フランシスの願ったしあわせは、思いがけなくやってきました。


周りの人に関心を持つことが生きるということかもしれません。この映画を観て、マルティーニやフランシス、そしてパティやニーノのようにありたいと感じました。


亡くなった母はいつも周囲のことを気にかけている人でした。今のわたしは、母が一緒に暮らして楽しいって、いってもらえる人間だろうかと、ときどき自分自身をふりかえってみようと思うのです。