ヒメツルソバ日記

明るい気持ちになった物事を綴ります

映画『人生、いろどり』を観て①

地元の市立図書館には、新刊の雑誌が、一冊ずつ正面を向けて立てかけられている棚があります。その棚にあった、俳優の役所広司さんが目を細めて笑っている、表紙の本に目が止まりました。


それは、雑誌『クウネル「あの人が薦めてくれた映画」』(2023年11月20日発売・マガジンハウス)という本でした。本の中に、デザイナーで、スタイリストでもある安野ともこさんが衣装を担当した、『人生、いろどり』という映画が紹介されていたのです。


『人生、いろどり』は、2012年に公開されています。徳島県の小さな町で、シルバー世代の女性たちが、葉っぱを料理のツマとして商品化して大成功を収めた実話にもとづいた映画です。幼なじみの三人を演じた、吉行和子さん、富司純子さん、そして中尾ミエさんの衣装が最初は質素なものから、気持ちが明るくなるにつれて服に色が添えられていくのだといいます。この映画を観てみたいと思いました。


徳島県上勝町、ある冬の冷害のために基幹産業のみかんが全滅してしまいます。その後は、農協が提案してくれる新しい品種のワケギや大根、ほうれん草などの野菜をつくり、農協を通して市場に出荷していました。けれど、平地の少ない山あいの町であるので出荷量はそれほど多くありません。


ある日、料理に添えられた葉っぱをハンカチにつつんで持ち帰る若い女性を見た、農協職員の江田は、農家に、町の山にある葉っぱを“つまもの”として販売することを提案します。たいていの人は反対です。そこらへんにある葉っぱを商品にしようというのですから。


そんな中、幼なじみで、お互いをかおるちゃん、はなえちゃん、みっちゃんと呼び合うシルバー世代の三人の女性が、やってみようということになりました。かおるちゃんを吉行和子さんが、はなえちゃんを富司純子さんが、そしてみっちゃんを中尾ミエさんがそれぞれ演じておられます。


かおるちゃんにやってみようと誘ったのは、はなえちゃんです。かおるちゃんの家は、みかん農家だったので山を持っていました。はなえちゃんは、夫に先立たれ、一人で小さな商店を営んでいましたが、別に暮らしている息子夫婦からは店をたたんで老人ホームに入るように勧められていたのです。


かおるちゃんは、夫と息子夫婦の四人暮らしです。夫は、みかんがだめになったあと、養豚業や原木椎茸の栽培をやりましたが、どちらもうまくいかなかったのです。また、働きに出ている息子からは、今やっている仕事を拡充させたいので、家を出て別居しようと思っていることを聞いていました。


みっちゃんは、若いころに町を出て学校に行き、そのまま都会で長い間働いてきました。この町に帰ってきていたのは、母親の腰の具合が良くないと聞いたからでした。花木の仕事をしていた父親は、亡くなっていました。みっちゃんには、両親にも、友だちにも言えなかった秘密があったのです。


三人は、江田と一緒に、青果市場で仲卸の仕事をしている裕香が予約をとってくれた料亭へ、葉っぱが“つまもの”としてどのように使われているのかを見に行きます。そこで、料理そっちのけで葉っぱに夢中になっている四人を、その店の女将と料理長は不審に思うのです。そのために女将がとった言動に、かおるちゃんとはなえちゃん、みっちゃんは傷つき、女将と料理長が部屋を出ていったあと、三人は内輪もめになりました。


そんな三人の様子を見た、後からやってきた裕香は、葉っぱを売る覚悟があんたらにあるのかと聞き、ちょっとつまづいたくらいで仲間割れをしているようでは何をやってもできっこないと言ったのです。


(②につづきます)