(①からつづいています)
何十年かたったあるとき、“いにしえの鳥がエレボールに戻る時、獣の時代は終わる”という予言のとおりの前兆がありました。スロール王の孫であるトーリン・オーケンシールドを頭に、祖父王の時代より仕えている戦士のバーリンをはじめ、商人、鉱夫、鋳掛け屋、おもちゃ職人も含めて13人のドワーフが集まります。そこに、魔法使いのガンダルフ、そして彼が選んだホビットのビルボが仲間となって、エレボール再興のための遠征に出発するのでした。
この映画を観ていると、『ロード・オブ・ザ・リング』での謎が解けます。ドワーフのギムリがエルフを嫌った訳。ビルボとゴラムの間で、どんなことがあったのか。そして、5人の魔法使いの中で最も偉大な力を持つ、白のサルマンが冥王サウロンに追従するに至る糸口となるような考え方だったりします。
今ならまだやめられる。遠征にたつ前夜、バーリンの口をついて出た言葉でした。あなたは生き残った一族を青の山脈で再生させた。平和で満ち足りた暮らしは、エレボールに眠る黄金より価値があるのではないかと、トーリンに確かめたのです。トーリンは、祖父から父、そして自分に託された鍵(エレボールの秘密の入口を開ける)を手に、やるしかないのだと言います。それを聞いたバーリンは、何度か小さくうなずき、ついていくよ最後まで、そう口にするのでした。
旅の途中でトーリンから、初めから無理だった、来るべきではなかった、足手まといだ、と荒い言葉を浴びせられたビルボはホビット庄に帰ろうとします。その彼が仲間のところに戻って来ました。なぜ戻った? トーリンの問いかけにビルボは返します。我が家は恋しいよ。本も、椅子も、庭も。だってあそこは自分の故郷だと。だから、君らの奪われた故郷を取り戻す手伝いをしたいのだと言ったのです。
皆が寝静まっている間に、こっそり抜け出そうとしたビルボのしあわせを、その夜のドワーフの見張り番は心から願ってくれていました。