(①からつづいています)
旅が始まりました。魔法使いガンダルフが、いつも14人の仲間と行動を共にしてくれる訳ではありません。ガンダルフは不審なことがあると、仲間から離れて一人で別に行動するので、残された一行は自分たちだけで難局を切り抜けなければなりません。
別行動を告げるガンダルフにビルボは、話がある、と切り出しました。何をじゃ? ガンダルフはビルボの顔をのぞきこみます。ビルボもガンダルフを見たまま、ポケットの中にある指輪を探っています。何を見つけた? 再びガンダルフが尋ねると、ビルボはとっさに“勇気だ”と答えたのです。それはよかった、必要になる。ガンダルフはいつものようにビルボの話をよく聞いて、簡潔に返してくれました。ビルボはゴブリンの棲みか近くの洞窟で、ゴラムが落とした指輪を拾ったことを、ガンダルフに言わなかったのです。
森の中にある、エルフの国の王は自分の国は守るけれど、他の人々を助けようとか、共に戦おうとはしません。王の息子であるレゴラスと近衛隊長のタウリエルは、世界が闇に支配されるのをそのまま見すごしにはできず、トーリンたちの後について行くのでした。
機転と礼節、愛嬌が必要じゃ。前作の『思いがけない冒険』の中で、ガンダルフがトーリンに教えた言葉です。エルフのエルロンド卿に、エレボールの地図の解読を依頼するためでした。トーリンが、エルフとの過去のいきさつにこだわっていたからです。
(③につづきます)