(①から続いています)
脳内モルヒネを分泌させるためには、どのようにしたらいいのでしょうか。それは、どんなことがあっても、物事を前向きに肯定的にとらえることであるといいます。逆に、怒ったり憎んだり不愉快な気分でいると、ノルアドレナリンという体によくないホルモンが出てくるのです。心の持ち方ひとつで体が、よくもわるくもなるということが医学的に証明されているようです。
そのために春山さんは、どんなことが起こっても、起こったのは自分だけに特別なことだと考えないで、親鸞(しんらん)のいう「さもありなん」の境地になって受け入れることだとおっしゃいます。そして、わたしたちの右脳はそのことの意味を知っていて、それはけっして自分にとってマイナスにはたらくものではないことを確信できれば、その物事をプラス発想にもっていけるのだと話されています。
春山さんは、幼いころから、自分が受けた恩恵は必ず世の中に返して、人々の幸福に役立つ存在になれるように努力しなさいと、母方のおじいさんからいわれ続けてきたそうです。子どものころから身近な人によって、そのようなことを教えてもらえることは、とても厳しく、且つとても幸いなことに思われます。一方で、自分の受けた恩恵に対して世の中に返していきたいと思う人たちがいます。たとえば、大病を患った子どもが、自分を助けてくれた医師や看護師の道を目指すように。また、振り返ってみると長い時間がかかって、あらためて多くの恩恵に気づかされ、自分にできることをしてお返ししたいと思うこともあります。つらい体験は、おおきなよろこびとセットになっているのかもしれません。
この本では、三重構造になっている人間の脳の解説をしてくれています。いちばん最初にできたのは、原脳といわれている「爬虫類脳」です。爬虫類脳は、エサを見つければ捕獲行動をおこし、エサにされそうになれば逃げ、そして子孫を残す行動をします。それは単体アメーバのような反射行動であって、いいかえると、自分中心の損得勘定のみということでもあります。そういう爬虫類脳が、わたしたちの脳にも最初の脳としてあるのです。二番目にくるのが大脳辺縁系の「犬猫脳」(原始哺乳類脳)です。犬猫脳は、爬虫類脳の損得勘定にもう一つ「快・不快」が加わります。人間でいうところの感情にあたります。人間の感情の源も犬猫脳から発しているようです。
三つの脳のうち、最上位の脳が大脳新皮質である「人間脳」(新哺乳類脳)です。人間はこの大脳が、発達を遂げ、あまりに巨大化したことで、頭の左半球と右半球の二つに分かれました。この左右の大脳を脳梁という神経の束で結んで、左右両脳はお互いに連絡を取り合いながら、高度な脳機能を発揮しているのです。そして、左脳と右脳はまったく異なる役割をしているのだとあります。
一般的に、左脳は理性能で、右脳は感情能であるといわれています。けれど、春山さんは実際に調べた根拠を示し、感情も左脳の領分に入れてよいと思う、とおっしゃっています。また右脳は、創造性や感性、直感力、そして図形認識などの機能を持つとともに、過去の人類が蓄積してきた知恵を遺伝子情報としてストックする「先祖脳」であると、春山さんは考えておられます。
筋肉のはたらきについての記述もあります。筋肉は、体をかたちづくり、体を動かしてくれます。また、血液の循環を助けます。それは、心臓がポンプの役割をして、全身の各細胞に血液中の栄養やエネルギーを供給し、今度は細胞の老廃物を受け取った、静脈血を全身の筋肉が心臓に戻すはたらきをするのです。そして筋肉は脂肪を燃やしてくれます。
(③につづきます)