ひうらさとるさんが描かれた『ホタルノヒカリBABY』は、女性漫画誌『Kiss』(講談社)では今年(2021年)の6月号で、単行本においては先日(7月中旬)発売された第6巻で完結しました。
『ホタルノヒカリ』シリーズとしては、『Kiss』誌上で2004年夏に連載が始まっているので、ほぼ17年の長い歴史があります。その歴史を3か月くらいの間に、テレビドラマや映画として、また、それに続く『ホタルノヒカリSP』と『ホタルノヒカリBABY』は単行本で堪能することができました。一気にこの作品を観たり、読んだりできたことを幸運に思います。同時に、人が時間をかけて努力してきたものを受けとめるにも、それ相応のエネルギーが必要なのだと感じました。1年に1作品ずつ公開されていた映画、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のDVDを続けて観たときも同じ気持ちでした。
最終巻で蛍は、自分の不得意分野の只中にいる2歳の息子、一(はじめ)に教えてあげられることが何もないのだと言って落ち込みます。そんな蛍に部長が話したのは、失敗を教えていくしかないということでした。どんなことでも、誰であっても、そこを越えて今があるというのです。わたしも納得しました。失敗した経験には心が痛みます。けれど、それがあってこその今だというのも事実です。それに、うまくいかなかったデータとして自分の周囲の人が活用できるかもしれません。
またこの巻で、部長、蛍、一の家族3人が暮らしている木造の一軒家は、蛍が購入したことになっていました。彼女は、部長に見合う人間になろうと頑張ったのです。その家に部長が、借りていた都心のマンションを引き払って越してきたのだといいます。テレビドラマや映画では蛍と部長が、ずっと部長の実家である木造家屋で生活していました。そのあたりの相違点についても、『ホタルノヒカリ』の単行本で確かめてみたくなりました。
『ホタルノヒカリBABY』の1巻で蛍は、“どうして人は日常になると忘れてしまうのだろう。家族や長い友人、馴れ親しんだ人でも、どんな出会いももともと全部が奇跡なのに⋯⋯”と、気づきます。しあわせは、普通になってしまっていることを、あたりまえじゃないんだって気づくことのようです。