(②からつづいています)
低く、簡単に作ってある竹垣のところでサヨコはよく、隣のおばあさんと顔を合わせます。おばあさんは、サヨコの気にしていることをズケズケと言ってきます。おばあさんが立ち去ったあとサヨコは、おばあさんのことを“ぜっていゆるさねえ”とつぶやくのですが、次にまた会ったときには、注意しつつ挨拶をするのでした。
一緒に暮らしていた、サヨコのおばあちゃんが亡くなって二年になります。中学生のころ自分を肯定できなかったサヨコにとって、おばあちゃんはいつも最強の味方でした。おばあちゃんが死んだとき、サヨコの心にぽっかりと穴が空いてしまったのです。その心のさみしい穴ボコを、時間をかけて少しずつ埋めてくれたのはネコたちでした。今、仏壇にはネコを抱いたおばあちゃんの写真が飾ってあります。
人は、自分がそれによって救われたり、それをする価値があると認めたものを仕事にするのだと思います。その仕事を通して、サヨコが望んだように、ネコだけでなく人とのつながりもできていたのです。
“どんなことがあっても必ず、最期を看取ると約束してください”。単身赴任期間が明けて、借りた子ネコを自宅へ連れて帰りたいと申し出た中年の男性に、サヨコが託した言葉が心に残りました。