(②からつづいています)
琢也さんが最も苦労したのは、英語のヒアリングでした。授業中、先生が何を話しているのか理解できず、バークレーの街で学生たちが討論を始めても、早口なこともあって、ほぼ内容が分からなかったそうです。そこで琢也さんは、(様々な分野の人物が講演するのを、インターネット上で無料動画配信している)TEDトークを教材に選びました。TEDトークは、画面に話している内容が表示されます。それを小分けにして書き写し、動画を再生しながら発音の真似をして覚えていきます。最後に、覚えた全部を自分が発表者になったつもりで話すのです。このようにして、琢也さんの英語を聴いたり話したりする能力が蓄えられていきました。
そうしたなかで琢也さんは、授業中の心の持ち方が変わりました。受講するだけでなく、これを自分が説明するとしたら……とか、この質問に自分だったらどう答えるかなどと考えるようになったといいます。
いよいよカリフォルニア大学UCバークレー校に編入できる機会がやってきました。そのためには学校の成績の他に、もう1つ重要なテストがありました。パーソナルステイトメント(志望動機書)です。琢也さんはその課題にあたり、バークレー校の現役学生の2人に協力してもらいました。
1人は、ベトナム系のアメリカ人女性、タミーさんです。バークレー校では当時、留学生を紹介する制度があり、琢也さんはその制度を利用したのです。タミーさんはものすごいスピードで、琢也さんの文章を正しい言い回しに修正してくれたといいます。彼女のおかげで文章力も向上したのです。
(④につづきます)