ヒメツルソバ日記

明るい気持ちになった物事を綴ります

映画『アバウト・タイム――愛おしい時間について――』を観て①

レンタルDVD店の棚を上段から、真横にずーっと目を移動させていたとき、『アバウト・タイム』のタイトルに目が止まりました。どういう意味だろう? 手に取ったパッケージを見ると、『ラブ・アクチュアリー』や『ノッティングヒルの恋人』を撮った、リチャード・カーティスさん最後の監督作品とあります。副題は、――愛おしい時間について――。観てみたいと思いました。


『アバウト・タイム』は、2014年に公開されたイギリス映画です。主人公ティムは、オレンジ色の明るい髪の色をした細身の青年です。彼の父ジェームズは50歳で大学の教員を辞めて、それからは家にいます。母のメアリーは自由で多忙、頼もしく冷静な女性です。母の弟デズモンド叔父さんは、天然ボケの最高にチャーミングな紳士です。そしてティムの妹キットカットは、自然体で、兄にとって世界で一番ステキな存在でした。


家族が暮らすのは、イギリスのコーンウォール。海を臨む丘の上に建つ自宅からは、浜辺に降りていける道があります。ティムが21歳になるまでは、家族で浜辺に行き、海に向かって石を投げたり、そこでサンドイッチを食べることが毎日の習慣でした。夏でも冬でも、どんな天気でも決行されるのです。


金曜日の夜は映画鑑賞をします。どうやら家の玄関脇の外壁にスクリーンを取り付け、台に載せた映写機から投影しているようです。家族は画面の前にほぼ横一列に並ぶ椅子に腰をかけ、空模様の怪しい日には傘が用意されています。一家の恒例行事のもう一つは、大晦日パーティーで、自宅に招いた多くの人たちがごった返す中で新年を祝うのでした。


ティムが21歳になった年、彼は父親の部屋に呼ばれます。父は息子に緊張を隠さずに、わが家の男は自分の過去にタイムトラベルできる特殊なパワーを持っているのだと告げたのです。自分でもその能力を使ってみて、やっとティムも父の話を理解できるようになります。父はティムに、“理想の人生を送るためにパワーを使え”と勧めてくれ、同時に金儲けに走って失敗した家族の実例も示しました。


ティムはロンドンで、弁護士として働くことになります。下宿先は、父親の脚本家仲間であるハリーの家です。二人の同居生活が始まって半年が過ぎたころ、ハリーが書いた脚本の舞台の初日に想像もしなかったことが起こります。ひどく落ち込むハリーを救うためにティムは、その夜の時間を遡りました。その場所で物事が順調に運ぶように手を尽くして現在に戻ってくると、ティム本来の今夜のできごと、理想の彼女との出会いが消えてしまったのです。彼女の名前は、ティムの母親と同じメアリーといいます。今度は、メアリーと再び交際にこぎつけるために要所、要所で過去に戻っていくティムがいました。


(②につづきます)