(①からつづいています)
二人のやり取りを隣で聞いていたほろ酔いのラージューが、“ランチョー導師様”と頭を垂れて声をかけました。自分の情熱は工学にあるのに、どうして成績がビリなんだろうというのです。“それはお前が臆病だから”。ランチョーは即答するとラージューの手首をつかみ、彼に、指にはめられた指の数より多い指輪を見るよう促します。ラージューの指輪はお守りでした。試験に、姉の結婚に、就職に⋯⋯。将来を心配ばかりしていたら生きていけない。ましてや勉強にも集中できないだろうと、ランチョーはラージューに話すのでした。
ファラン、ラージューの二人は、もしランチョーが、大好きなのに気持ちを伝えられないでいる学長の娘ピアに告白することができたら、自分たちも彼が助言してくれたことに勇気を出して挑戦することを約束します。
ランチョーには、困難が発生したときに唱える口ぐせがあります。“うまーくいーく”。心はとても臆病だから、マヒさせる必要があるというのです。困難が去るのかと、ラージューに問われたランチョーの答えは、“無視する勇気が出る”でした。
この映画は大学時代のできごとと、卒業以来十年の間、音信不通になっていたランチョーを探す旅とが並行して描かれています。ランチョーが指揮をとり、ICE工科大学生が一丸となって学長の長女モナ(ピアの姉)の出産を手伝う場面が印象的です。社会に必要な人工物をつくることを目的とした工学を学んでいる専門家たちなので手際がいいのです。
170分。3時間足らずの上映時間は、とても中味の濃いものでした。しあわせに生きるってどういうことだろうと考えさせてくれます。
そして、“うまーくいーく”。心を落ち着かせる言葉は必要です。