(①からつづいています)
フロドとサムのほうは、(フロドに指輪を譲ったビルボの前に、この指輪を所有していた)ゴラムと旅をしていました。ゴラムは指輪への愛憎のために、指輪を持つフロドたちの後をつけて来たのです。2人に気づかれたゴラムは、指輪を取り返すことに失敗し、モルドールへの道案内になったのです。フロドは、ゴラムがずっと以前に“スメアゴル”と呼ばれていたことを、ガンダルフから聞いていました。フロドからその名前で呼びかけられるようになったスメアゴルの気持ちは安定していきます。けれどあることがきっかけで、また疑いの心がめばえ、自身への愛憎の念もあって、もとの情態に戻っていくのでした。
仲間がいても、道は自分の足で歩くしかありません。一人で暗闇を歩くようなときは、どうすればよいのでしょうか。
僕はもうだめだ、サム……。指輪の力によって自分自身を見失ってしまったフロドが、サムにもらした絶望の言葉でした。分かってます――こんなことになって……しかもこんな所まで――来てしまった、サムはフロドの気持ちを受けとめました。そうして、心に深く残る物語の中に入り込んだ気がします、と言ったのです。幼い頃に聞いた、暗闇と危険に満ちた物語。明るい話になり得ないのでつづきを聞きたくなかった。けれど暗黒の日々にも終わりが来て、やがて太陽が明るく輝く新しい日がやって来ました。どうして心に残ったのか? それは、物語の主人公たちが決して道を引き返さなかったからだと言うのです。何かを信じて――歩み続けたんです、と。
何を信じればいい? フロドの問いかけにサムは、フロドを立ち上がらせて、この世には命を懸けて戦うに足る――尊いものがあるんです、フロドと自分に告げるのでした。