「老々介護を冒険だと思い楽しんだ」。去年(2019年)の夏、夕食の後かたつけをしながら見ていたテレビ番組、「爆報!THEフライデー」から流れてきた言葉でした。
老々介護を経験されたのは、イラストレーターで、エッセイストでもある、田村セツコさんです。セツコさんが68歳のとき、91歳のお母さんが自宅で転倒して寝たきりの状態になり、同じ時期に64歳の妹さんもパーキンソン病を発症しました。セツコさんは自宅で、それからの6年間、お母さんと妹さんの介護をされたのだといいます。
介護の生活を冒険という言葉でとらえた、セツコさんの考え方を知りたいと思いました。
「おばあさんは『ひとりぽっちのアリス』みたいだなって思います」。このような文章を、セツコさんが綴られた本、『すてきなおばあさんのスタイルブック』(WAVE出版)の中で見つけました。年をとって、おばあさんになることは、昨日までできていたことが今日はできなくなるといった、毎日からだが変化してびっくりすることだらけです。なので、『不思議の国のアリス』みたいに毎日が冒険であって、わくわく、少しどきどきしながら暮らされています。生きるということは一分一秒がはじめてのワンダーランド。未知の森へ一歩一歩わけ入っていくこと、それをおもしろがって暮らしてみようと思われているのでした。若いときとちがうのは、むやみに心配や悩むことをしなくなったことです。そんなことに時間を使うのがもったいない、せっかく生きているのですから楽しむほうがずっとすてき、だとセツコさんはおっしゃっています。
そんなセツコさんの記憶に残るすてきな映画は、なんといっても『黄昏』であるそうです。タイトルだけは聞いたことがありましたが、観たことがなかったので、レンタル店でDVDを借りて来て観ることができました。
(その2につづきます)